孤独論 田中慎弥

サブタイトルに、
「逃げよ、生きよ」
とある。
我輩的には、パッと散る生き方が好きなのだが、
「逃げよ、生きよ」
というのも、アリだと思う。
ただ、著者の田中慎弥氏は、逃げる必要が無かった。
というか、生活と闘う必要が無かった。
大学受験失敗後、実家でいわゆる引きこもりの生活を、
およそ15年近く送った後、33歳で作家としてデビューされた方です。
引きこもりの中、家で何をしていたのかと言えば、
ひたすら本を読み、小説を書いていたそうです。
もちろん、相当な葛藤などもあったと思うのですが、
しかし、高校卒業後、
15年近く引きこもりの生活を送ることができたというのは、
やはり、相当なぜいたくだと思えるのです。

”高校を卒業し、大学受験に失敗したあとのわたしに働くという発想はありませんでした。頑(かたく)なに拒んだというよりも、なんとなく働く気になれなかった。およそ切羽詰まる理由は見当たりませんでした。
実家暮らしだったので住まいはあったし、父が他界していたから、経済的に楽ではなかったけど、母の仕事の収入や、同居していた祖父が受け取る年金や恩給で、家族三人、どうにか食べていけました。”
(本書163,164ページ)

お母様は、著者を強く叱らなかったそうです。

”母のそうした態度があったからこそ、わたしは作家になれたともいえます。”
(本書165ページ)

こういう環境は大切だと思う。
環境と言っても、それは心の持ち方ひとつで作れると思う。
死ぬことは怖くないし、自分の人生に後悔はしない、
と言う覚悟があれば、それでいいと思う。

”そうはいっても、生活していくためには仕方がない、周囲や社会と足並みを揃えて仕事をすることで対価を得て、生計を立てているのだと言われれば、もちろん反論はできない。立派なことである。人生はだれのものであれ、基本的にたいへんです。生きていくのは楽ではない。
いや、そこなのです。だからこそ、です。仕事だからやっている、糧を得るために同調し、独りの時間すら持たず、好きなことに目を瞑(つむ)る。端的に、それではつまらないのではないか。人生はたいへんである。ならばせめて、少しでもやりたいことをやれた方がいい。おもしろいほうがいい。
そのようにあなたの人生の舵を切ることができるのは、ほかならぬあなた自身だけです。本書でわたしは、日々働きながらもどこかでもやもやと煮え切らない思いを抱えている人に向けて、孤独であることの必要性を述べてみたいと思います。いまの世の中、放っておけばいつしか奴隷のような生き方に搦(から)め捕(と)られてしまう。だから、意識的にそこから逃げていかなければならない。”
(本書 はじめに 5ページ、6ページ)

↑この部分は、賛同できる。大賛成である。
我輩は、このホームページのいたるところで、
「寂しさほど危険感情はない」
と訴えている。
本書のように
「孤独であることの必要性」
を強調してくれる本は、我輩的にとても嬉しい。
死ぬことは怖くない。孤独であることも怖くない。
「なるほど、命が無限であることは分かった。
では、どう生きればいい?」
と考え中のあなたに、一読をおススメします。

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